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 プロフィール・説明Twitterマシュマロ

吸い殻

2019/10/26 11:17

2人が歌う「たばこ」を聞いたら衝動的に出て来た
SMC組初オフコラボ後の妄想。寿司組メイン。
 
※社長の喫煙描写あり。フィクションです。
※恋愛ではない(重要)

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 あと20分程でタクシー来ます、という声を聞いて、葉加瀬冬雪はスタジオの中を改めて見回した。
 今も微かに肉の香りが残る広い室内ではスタッフが忙しく動き回り、機材の片付けが進んでいる。隣の席では先程まで船を漕いでいた夜見れながとうとう机につっぷして眼を閉ざしていた。少しでもそのまま休ませておこうと、なるべく音を立てないように席を離れる。
 恐らくトイレだろうと思ったけれど、廊下に出てからも何となく姿を探してしまった。その結果通路の端、ガラス戸の向こうの薄闇にその背を見付けると小さく、本当に小さく心臓が存在を主張した気がする。
 逡巡はしたがそっと歩み寄って重い扉を開ければ夜でも蒸した空気が肌に纏わり付いた。そして鼻腔を擽る微かな香りに誘われるように、更に1歩踏み出す。
 
「……おや葉加瀬さん。どうしました?」
「あっ待っ……あぁ……」
 
 肩越しに振り返った男の動きは酷くスムーズで、横に並んだ葉加瀬が制止を掛ける暇さえ無かった。
 骨張った指の間に挟まれた細身の煙草が備え付けの灰皿に押し付けられる。その長さはまだ半分程残っていて、余計に申し訳無さを感じて葉加瀬は肩と眉を両方落とした。
 
「別に消さなくてよかったのに……」
「駄目ですよ、未成年者の前ですから」
 
 軽やかに笑って見せた彼——加賀美ハヤトは、同期と言えども葉加瀬より10も歳上だ。法令遵守の精神や紳士的な振る舞いをごく自然に彼はよく出来た大人であると周囲からも思われているし、葉加瀬もそれに概ね同意する。しかし雪兎のような赤い瞳は何かの違和感を持ったまま、加賀美の顔をじっと見上げた。その視線に少しだけ居心地が悪くなったか、若干言い淀んでから同じ質問が重ねられる。
 
「……で、えーと……どうしました?」
「社長って煙草吸うんだね」
 
 その言葉に、葉加瀬を見返す加賀美の双眸が僅かに細まった。
 彼女はポンコツだの指示厨殺しだの不名誉な渾名を幾つも賜ってはいるが、本質は異なると少なくとも同期2名は気付いている。
 例えばゲームの操作が下手なだけで、地頭はそう悪くないとか。マルチタスクが苦手なだけで、根気強くて学習能力はあるとか。或いはここぞという時の直感に優れ、人の機微や情緒によく気付く眼を持ち、大勢への配慮の心を持っているとか。
 
「…………ええまぁ、本当にたまにですが」
 
 故に葉加瀬は理解してしまうだろうと、加賀美は諦めたように緩く笑ってみせた。端から見れば温和なだけだが、その裏には幾つもの心情が篭る。
 事実、はたはたと瞬く葉加瀬は思考する。副流煙を吸わせたくないだけなら要件だけ聞いてさっさと追い返せばいいものを(時に加賀美は意地悪だからそちらを選択する可能性は十二分に考えられた)、故意に火を消したしたのだと。何なら喫煙する姿をあまり見せたくなかったし、この話もしたくないのだと。
 交わった視線を外したのはどちらが先だったか。多分自分の方だと、お互いがそう思う。珍しく長めに沈黙が落ちた。
 
「……タクシー、もうすぐ来るって」
「そうですか、じゃあ私も戻りますね」
 
 普段通りの声音を先に発したのは葉加瀬だったが、遅かれ早かれ似たような内容の問いを加賀美も向けていただろう。本質に踏み込まなくたって発する言葉は旧来の友人のように気兼ねが無いが、それでなくとも徹底的に騒ぎ倒した後、深夜の解散前の空気はどうにも居心地が良いとは言えない。
 
「夜見さんは大丈夫ですか?」
「寝てた」
「あはは、ちゃんと送ってあげてくださいね」
「私に任せていいの?」
 
 故に気付けば冗談にはしきれない自虐が葉加瀬の口から転がり落ちていた。
 多少抜けた時はあろうともいざとなれば頼もしい兄のような存在と、可愛らしくもしっかりした姉のような存在を前にしたら、自分の小ささが身に染みる。だが返答は発言を嘆くよりも早く来た。
 
「どうしてですか?」
「…………えっ……と」
「あっ、もしかして心細いですか? そうですよねもうかなり遅い時間ですし、どなたか女性のスタッフさんについて行ってもらえないか私からも頼んでみましょうか」
 
 そして少しだけズレていた。何処までが本心なのか判別するのが困難な真剣さで、初めてこのような場で仕事をやり遂げた17歳の女の子が抱えているだろう不安を予想して、それを補うべく加賀美は提案を述べていく。
 けれどその中に、葉加瀬が頼りないとはニュアンスにさえも出て来ない。極々当然のように、純粋な心配と配慮しか存在しない。
 それがとても嬉しくて、同時にそれでも触れさせてはもらえない部分が残り香として漂って、心の端をひたりと冷やす。
 だがそれでも良かった。だってまだ、出会ったばかりなのだから。
 
「…………」
「えっ葉加瀬さん、どうして今私ぶたれたんですか?」
「煙草の匂い付いてる。夜見にやだって言われるよ?」
「えっそうなんですか、それは辛いな……やっぱり後の方がよかったか……」
「まぁ適当に言っただけだけど」
「……っく……!」
 
 だから代わりに憮然とも照れとも何とも言えない表情をして、無言で加賀美の二の腕の辺りを軽く叩く。そのまま普段通りのじゃれ合いをしながらケラケラと笑った葉加瀬が踵を返せば、翻弄されるがままに加賀美がついて来る。
 高校生と代表取締役。17歳と27歳。女と男。単なる同期。
 見えている側面はごく僅かで、知らないことは山程あって、けれど知っていることもある。
 扉を開き直して明るい廊下へと舞い戻れば、エアコンの効いた室内から2人を呼ぶ声がする。踊るように楽しげに歩調を早めながら、銀糸を揺らしてくるりとターンし少女は口を開いた。
 
「社長」
「何ですか?」
「……ううん、何でもない」
 
 ふと心に浮かんだ言葉は声にはせず、代わりにクスクスと笑って再び前を向いた。その直前に見えた、どういうことだと呆けたような表情が余計に面白くて、してやったりと肩を揺らす。
 言うまでもないことは言わなくたっていいだろう。重荷を科したい訳でもなく、楽しめればそれでいい。この関係がずっと続いて、同期2人が傍に居て、応援してくれる者達を楽しませればそれでいい。「楽しいことだけやりましょう」といつぞや彼が言っていたから、その通りにすればいい。
 それ以上の願いなど無いと、そう思っていた。
 
「葉加瀬さん」
「何ー?」
「ちゃんと見てますからね」
 
 ——強かな男は、わざとそのタイミングを狙ったのだろうか。
 葉加瀬が勢いよく振り返り直した時には、「なんちゃって」と加賀美は眼を細めていた。柔らかく非の打ち所が無い笑顔を前にして赤い瞳は真ん丸に開き、薄い唇から出て来るのは細い吐息だけ。
 先程脳裏に浮かんでも言わずにいた言葉をそのまま向けられた衝撃に心臓が跳ねる。どういう意味だと問い質すべきか、そんなことやめろと意地を張るか。いずれの選択肢を取ることも出来ないまま立ち尽くす。
 そこで去来した感情が何か理解するよりも早く、葉加瀬の背後で高音が爆発した。
 
「いたーっ!!!」
「ひぃっ?!」
「夜見さん?!」
 
 向こうも2人を探していたのだろう、廊下どころか建物中に響きそうな大音量を発した夜見がずんずんとこちらにやって来る。完全にご立腹な様子に2人の顔が思わず引き攣った。
 
「しゃぁちょぉお、冬雪と何話してたんですかぁ?! もしかして誑かしてたんですかぁ?! 冬雪は私のですよぉ!」
「いえ違うんです夜見さん、誑かすとか全くそんなことは無くて」
「冬雪だいじょーぶ? 変なことされてない?」
「あーうん、全然大丈夫だよ。ってか夜見元気だねぇ、目ぇ覚めた?」
「眠いよっ!」
「やっぱり眠いんだ」
 
 接近する合間にも威勢の良い声を次々発する夜見は、葉加瀬に躊躇い無く抱き着いて頬を寄せて来た。
 葉加瀬からしてみれば、夜見のものという点には疑念はあるものの内心助かったと感じる。が、一瞬後には、いや何がどう助かったのかと釈然としない感情が浮かんで横を窺った。その視線にも気付かないと見える加賀美は仲の良い女子2人の様子を微笑ましく見守っている。
 何かムカつく。女子高生の感性は素直なものだった。
 
「……兄さん、貸し1つな」
「え?」
「あー! やっぱり何かしてたんだー!」
「しまったプレミだったか……でも薄々そんな気はしてた……」
「夜見にもさっきの言ってあげないの?」
「いや、えっと……今ですか?」
「今!」
「えー、何ですかー? ……やっぱり告白?! しゃちょぉ、いきなり2人まとめてとかやりますねぇ!」
「いえ絶対違います」
 
 テンポの良過ぎる会話の中、2対1で着実に分が悪くなっていく加賀美の視線が泳ぐ。しかし逃さないとばかりに詰め寄る女子達に、諦めたように溜息を吐いた。
 小さく咳払いし、前を向き直し、例の如く見目麗しい笑顔を浮かべる。
 
「…………お2人のことは、同期としてちゃんと見ていますからね」
「……何かさっきとニュアンス違くない……?」
「そうなの? でも夜見もねぇ、冬雪と社長のこと、ずーっとずーっと見てますからね!」
 
 とびっきり良い声を作った白々しさを感知したか、首を捻る葉加瀬に対して「そんなことないです」と加賀美が瞬時に否定する合間にも、先程の憤りは何処へやら、実に嬉しそうな満面の笑みを夜見が浮かべる。
 目紛しく変わるパワーバランスと言葉の応酬はそれだけで楽しいもので、何時間でも喋っていられるとついつい思ってしまう。
 
「車到着しましたー」
「「「はーい!」」」
 
 けれどぎゃーぎゃーと騒ぎつつもスタッフの呼び掛けへの返答は綺麗に揃って、それぞれ顔を見合わせれば思わず吹き出し更に破顔した。深夜テンションの所為もあるが、笑い過ぎて目尻に浮かんだ涙を葉加瀬は小さく指で拭う。
 歩調も歩幅も三者三様。見てきたものもそれぞれ異なり、向かう場所すら似て非なるかもしれない。隣を行くかどうかすら定かではない。それでもきっと大きく離れることはないのだろう。明日も明後日も、来年も、10年後も。何故かそんな予感がしていた。
 
 夏空の下にはもう、煙草の香りは何処にも残っていなかった。

後書きというか余談というか思ったことを書き殴っただけ。

タイトルはどうしても思い付かなかった……
「たばこ」がベースなのにそれを否定、というか先に進む話。なので吸い殻。
葉加瀬がメインカメラなので本当は科学系にしたかったけど知識が足らなかった。
 
そしてある意味2人の歌(声)にも正反対かもしれない。
葉加瀬はそもそも「ちゃんと見てて」と言わない。
社長はようやく「ちゃんと見てる」と言えた。
 
だって幸せにしたかったので。お別れなどさせません。
3人共放っておいてもお互いをちゃんと見てるからね、安心だね。
 
社長の過去はご想像にお任せします。そもそも何故このタイミングで吸っていたのかとか好きに想像してね!
正直この男は演技上手なので葉加瀬を騙すぐらい容易……そうでいて、葉加瀬には全部見抜かれていてほしいなという思いを詰め込みました(※見抜けてない)。
あと恋愛ではない。重要。
葉加瀬って自分で恋愛しているイメージが無いというか素晴らしい壁の人だと思ってるので、あくまで観測者として社長に色々な感情を持っててほしいです。今後共宜しくお願いします。
 
夜見はまだ歌ってないけど今(10万人配信中)歌うんじゃないかとハラハラしている。
しかもこっちも既に「2人がどこかに消えてしまう」が既に配信にあるというね……
相変わらずこの人らは公式が最大手なんですが、闇ネタ好きなので何か思い付いたら書けたら嬉しいです。いや最後にはハッピーエンドです。SMC組はてぇてぇんだよ!!!

小説SMC組葉加瀬冬雪夜見れな

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