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 プロフィール・説明Twitterマシュマロ

最終更新:2020/03/26 11:10

社長達のArk実況プレイを戦記っぽく書いた二次創作物……の番外編。
あまりに本戦の熱量が大きすぎて吐き出すしかなかった。
 
大体は本編に寄せていますが、各種変更・誇張表現・捏造・妄想などを交えています。
事実関係は他視点含めた配信をご確認ください。

ASK-ヨルミナティ戦争のネタバレを含んでいます。宜しいですか?

 夜見れなという少女が居る。
 
 最初にこの島で"四皇"という言葉が使われた時(あれは確か夢追翔だった)、それは「島の滞在が長い、何だかヤバそうな者達」ぐらいの意味でしかなかった。その意味では夜見もそれに該当していた。実際には夜見は恐竜を愛で、仲間と平和に楽しく暮らしていただけだった。
 だが他の四皇である叶と渋谷ハジメは軍備を進め、本間ひまわりはPvP経験者という牙を持っていた。
 この為、それに並び称される夜見は強いのだと何時の間にか皆に思われてしまった。
 
 加賀美ハヤトは夜見れなの同期である。
 島では"戦乱"として邪悪な覇道を歩もうとしている加賀美であるが、夜見はそれ以前から苦楽を共にしている相手である。先輩は50人を超え、後輩も増え続ける中で、たった2人しか存在しない真に対等な人物である。
 加賀美は同期を常々尊敬し、人間として好意を持ち、尊重し続けて来た。これは夜見も同様である。
 そして加賀美は戦乱を望まぬ者には攻撃をすることは無い。これは渋谷ハジメに対する最初の交渉でも明白である。
 
 ここからは筆者による推察である。従来の戦記とは性質が異なるものであると留意されたし。
 このような人物である加賀美が独断で夜見のトライブの平和の象徴とも呼べるシェリン・バーガンディを誘拐する可能性は非常に低いと筆者は思う。事前に何らかの打診が行われたと想定すべきであろう。
 即ち、夜見は戦争をする気があるかと加賀美は秘密裏に問うた。
 これに対し夜見は承諾した。このArkという世界での戦争を、或いは加賀美がやろうとしている戦乱の実態を知らぬならば無理も無い。大好きなしゃちょぉと遊べる、他のFPS・TPSゲームと然程変わりは無かろう、精々それに恐竜同士のぶつかり合いが追加された程度だろうと気安く考えても不思議ではないのである。
 
 それを訊き、加賀美は意気揚々とシェリンを誘拐した。四皇会議の同時刻というのは夜見も聞かされていなかったかもしれないが、メンバーに危害を加えられたトライブ長として、そして四皇としての夜見の動きは完璧であった。
 3人の敵に対したった1人で乗り込み、真っ先に厳格に仲間の救出を要求した。一度は加賀美をアルゲンタヴィスで捕らえ、加賀美が強大な存在に対しては助けを乞うしかない小悪党でしかないことを、四皇会議に注目しそのまま継続して事件の行く末を見守っていた多くの者達へ刻み付けた。一度は騙され監禁されるも、本来アイドルマジシャンである自身のアイデンティティである"脱出マジック"を自らの命と引き換えにして行い再登場し、加賀美を追い詰めた。
 
「これが四皇……!」
 
 加賀美達の言葉は世界の代弁となった。
 身代金の支払いがひまわりであったことも、結果的には夜見が邪悪に屈しない姿を示すこととなった。去り際、アルファスレイヤーズの者達の名を1人1人読み上げる夜見れなは、もうただの幼気な少女ではない。この島の趨勢の一角を担う強大な存在なのだと大多数へと知らしめた。
 
 けれど恐らく、彼女はただ加賀美と視聴者の期待に応えたかった。
 いつしか付いた"ビッグマム"の仇名に相応しくなるように、より一層トライブメンバーの為に尽力した。初心者ばかりの仲間達の分まで素材を集め、装備を作った。ヨルミナティの名を冠し、強力な恐竜を求めた。
 この島の皆を家族にする。この理想だけで言うならば正に彼女の望み通りであったのだろう。だが歯向かう相手は力尽くで従わせるという、その方針が夜見の本意であったのかは定かではない。
 だがアルファスレイヤーズとの会談の場、夢追の「戦争をして頂けるんですか?!」という一言が、最後の一線を踏み越えさせた。
 もう元には引き返せぬ地点である。宣戦布告は事実上為された。
 陣太鼓と周囲の喧騒の中で、一度は天宮誘拐に怒り狂ってみせた夜見と口数が少な目であった加賀美が互いに何を想ったのかは、ここに記すには推察し得る候補が多すぎる。
 
 戦争。時期はどうあれ、ひとつの未来が定まった。
 必死に準備を進める夜見に手助けしたのは緑仙だった。島の外では加賀美と夢追に縁深い彼または彼女は、だからこそ大人達を敗北させたかった。この親愛なる友人を勝たせたかった。一生懸命になり過ぎる夜見に寄り添い、交渉をし、作戦を練った。
 そして加賀美もまた2人を見ていた。夜見が如何に努力を怠らない人間か、緑仙が如何に的確な采配を行うか誰よりも理解しているからこそ、2人の尽力に相応しい対応をせねばならぬと奮起した。本気に対し本気で挑まねば何も面白くないし、ただただ失礼であると知っていた。
 加賀美が秘密兵器を購入し加速度的に軍備増強を進めていると察し、夜見は焦った。ひまわりに協力交渉を仰ぎ、策を探った。
 だが同時にあまりに圧倒的な勝負にしてはならないと、暗黙の内にか明確に打ち合わせてか、2人の将は考える。蹂躙するならせめてそれを是とする筋書きが無ければならない。出来れば拮抗し、見る者が手に汗握り、勝者が予想出来ない白熱した戦いであるのが望ましい。彼女も彼も戦士であると同時にエンターテイナーであった。
 
 夜見には立場と、相手への過小評価があった。恩を感じてやって来た傭兵・葛葉の戦力を制限し、ラトナ・プティを戦列から外した。
 加賀美には野望と、相手への過大評価があった。あらゆる手段で人材をかき集め、士気の高い仲間と共にひたすら素材を採取し文明を発展させた。
 ベルモンド・バンデラス。エクス・アルビオ。そしてとある武器商人。
 彼らの望むままに、血を、暴力を、肉を、敬意を加賀美は提供した。結果、ベルモンドの鉱夫としての能力が、エクスの持つアイテムが、商人からエクスに与えられた新兵器が、アルファスレイヤーズに足りなかったピースを埋めて行く。
 その日が近付く中、ヨルミナティは沈黙し、アルファスレイヤーズは最後まで"楽しんで"いた。
 
 2020年3月23日。直前の報道番組にて明るみに出た参戦者の人数は、9対7。アルファスレイヤーズの人数不足であった。
 人間の数が物を言うであろう今回の戦争のルールに於いて、これは致命的な問題のように思えた。しかし加賀美の拠点では8名が慌ただしく準備していた。
 イブラヒムのトライブ・コーヴァス帝国の女騎士、フレン・E・ルスタリオ。初心者ながらもトライブ長の手助けをするべくやって来た彼女は、後に加賀美の指示を得て重要な役目を果たす。
 そして戦力配備時間直前、アルファスレイヤーズの拠点に小さな武器商人が現れる。アルス・アルマル。爆発物を数多持参した彼女を、蛮族達は各々武器を手に歓迎した。おお、何と極悪非道、彼女は売買を拒まれたばかりか、自らの命を護る為にこの野蛮な面々と共に戦う羽目になったのである。
 加賀美は彼女の参戦を相手へ伝えなかった。故意であるか否かは不明である。そして蛮族達の凶行も止めなかった。これがこのトライブでの礼儀であるとした。
 もうその頭の中には筋書きが出来ていた。ずっと以前から、否、最初からアルファスレイヤーズは悪であった。
 
 急な人員増加は戦争のルールには抵触していない。書かれていないことは禁止されていないのである。同時に策略としては非常に有効である。誰が敵か分からない状況は混乱を齎し、その機に乗じれば戦線を崩壊させることすら可能である。
 だがこの行為を卑劣だと罵る者は居るだろう。たとえ真実が多忙が故の見落としだったとしても、不必要に戦場を掻き乱したのだと喚く者が居るだろう。
 それでも加賀美はそれを飲んだ。戦乱を志した時から汚名を被る覚悟は出来ている。寧ろ悪だと指摘されればされる程攻撃されやすく、争いが起こせるのだから好都合でさえある。
 気に掛かるのは実際に参入した者達にもその覚悟があったかどうかだが、そちらも加賀美が事前に問うていたと考えるべきであろう。それでも参画したならば、彼女らの勇気を疑うべくもない。
 何はともあれ、これで戦闘員の人数は互角である。各々の戦力が分からぬ今、頼りになるのは目の前にある数字だけである。兵士の質や装備品や恐竜の数が分からない以上、限られた情報の中で万全の対抗手段を取るしかない。
 だが。だが同時に、ここに至る前までに、加賀美が気付かない筈がなかった。
 
『皆と遊びたかっただけなんだ』
 
 かつて"太鼓の達人"同盟を結ぶ際、イブラヒムはそう言った。
 なにも戦いたかった訳ではない。恭順を示さなかったのも、多分に思考を巡らせたのも、一騎打ちを申し込んだのだって、ただ先輩達と一緒に遊びたいだけだった。建築は楽しいけれど、たった1人で巨城を作り続けるだけは嫌なのだと、そう言った。
 アルファスレイヤーズは、加賀美はそこで自らの誤解に気付いた。その瞬間から腹を探り合う、裏切りを想定した同盟ではなく、紛れも無い盟友となった。
 それと同じかもしれない。或いはもっとずっと否定的なのかもしれない。
 
 夜見は、本当にこの戦争を望んだのだろうか。
 初めは楽しそうだと承諾したものの、途中で実態に気付き嫌気が差しているのではないだろうか。それでも最早引き返すことは出来ず、ただ闇雲に前に進むしか無く、それを誰に言うことも出来ず、今日の日を迎えたのではないか。
 加賀美にそれを訊く術は無い。自ら吹っ掛けた以上、中断することも出来ない以上、これまで貫いて来た彼女の矜持を護る為にも戦うしかない。
 
 無情にも用意の完了していない両軍の頭上に開戦の照明弾が散る。
 加賀美と夜見は戦った。アルファスレイヤーズも、ヨルミナティも、あらん限りの武器を持ち、あらん限りの恐竜に乗って戦った。
 事前に用意されていた戦力はほぼ拮抗か、ヨルミナティの方が上だったかもしれない。接戦を求めた調整は確かに功を奏していた。
 そう、もう少し彼女らが練度を高めていれば。運ぶべき物を運び、設置すべき物を設置し、役割を定め、各々が意識し合い、的確な情報伝達を行なっていれば、勝者と敗者は逆転していたかもしれない。誰かの行動ひとつで、何かの言葉ひとつで全ては変わっていたかもしれない。
 だが現実の結果は収束する。多くの者達が見詰める前で、刻一刻と時計の針は進む。
 四皇はその立場と期待故に負けられなかった。悪人はその野望と本能故に勝ちたかった。
 ただただ全力を尽くした。戦争とはこれまでの積み重ねの結果なのだと誰かが言っていた。それが露呈していく。大勢の目の前で、誰も見ていない場所で、戦況は揺れ動く。感情も、理性も、全て熱狂に呑まれていく。
 それはとても心地良く、同時に空虚で、名残惜しく、一刻も早く終わってほしいものだった。
 アルファスレイヤーズの中でも最も自由で残虐なエルフの武器が火を吹いた。爆炎と黒煙の中から死体がボロボロと零れ落ちた。ああ、何と惨たらしい。その場面を見た多くはそう心を痛めたろうが、それが戦争だった。皮肉にも実際に戦っていた者達の多くはそれを知らずにいた。
 ヨルミナティの嘆きはアルファスレイヤーズには届かない。もう戦わずともよいのだと、鳩達の囀りでようやく殺戮者達は足を止める。
 仮初の歓喜を経て、正確な第一報がようやく加賀美の元へと届く。
 
「皆様、皆様。……マジみたいです」
 
 それは数多の準備を経て、時に心が折れかけながらも手にした結末であった。
 勝利者達は拳を掲げ歓声を上げた。ある者は自らの不備を詫び、別の者がそんなことないと仲間を称え合った。丁度夜の帳が下りた戦場を沢山の照明弾が照らし出した時、美しい光を見上げる覇者達は笑っていた。
 その男1人を除いて。
 加賀美は深く息を吐いた。そこには悪どく笑う蛮族も、賠償金の計算を行う策士も居はしない。
 何も無かった。ただ喜ぶ皆に合わせて言葉を繋ぎ、次の行動の準備をした。相手方との通信を繋ぎ、この戦争を確かに終わらせねばならなかった。
 そう、勝利を未だ信じられずとも、終わったのだ。それを徐々に実感する。
 だが戦争することが目的であった男の前には、もう何も無かった。
 
 連絡を受けて先程まで戦っていた少女達がやって来る。その表情は晴れやかで、疲弊した男とは対照的だった。勝者と敗者が逆であるかのようだった。
 それでも加賀美は己の役目を果たした。αUNION。それが今の彼らの名である。アルファスレイヤーズ、コーヴァス帝国、ジュラシックワールド、まるまる。4つものトライブが手を取り合い、共に勝利を奪い取った"強者の連合"である。
 だが今の加賀美は自称するようにこの島最弱の長であった。交渉の時の慇懃無礼とも、脅迫の時の狂気とも、恐竜達を呼ぶ時の優しさとも違う。その気になれば獰猛な巨大肉食竜にも匹敵する咆哮が出来る喉を持っているにも関わらず、今の彼の声音にはあまりにも力が無かった。
 気力を燃やし尽くした彼を助けたのは仲間達だった。夢追が場を繋ぐ。緑仙がわざと弄る。どちらの勢力も穏やかに笑っていた。
 誰も敗者を嘲らなかった。誰も勝者に難癖を付けなかった。勝者は皆の参戦に感謝し、敗者は爽やかな悔しさと共に次の策略を練っていた。
 そして加賀美の目の前で、夜見は言った。
 
「Ark楽しい! こんなの味わえないよ」
 
 それはきっと、何よりの救いで、加賀美が戦いの先に本当に求めたものだった。
 ——最初からそれでよかったのか。
 零れ落ちた掠れた呟きに込められた万感は、この未熟な筆では伝え切れない。
 
 
 
 夜見れなという少女が居る。仲間を愛する彼女は、四皇と呼ばれていた。
 加賀美ハヤトという男が居る。戦乱を求める彼は、戦国Arkと呼ばれることとなる。
 そして、葉加瀬冬雪という少女が居る。
 
「焼肉の絆はすごいので、それは無視出来ない」
 
 戦争前、恐ろしい悪魔により開かれた討論会にて関係性専門家として鋭い意見を発表した実験大好き女子高生である。
 彼女こそ、夜見と加賀美のもう1人の同期である。
 始めはヨルミナティ優勢としていた彼女であったが、加賀美がエクスに求められた焼肉という切り札(カード)についてはこう評す。彼女がこの論を呈するには根拠があった。
 遡ること約7ヶ月前、デビューしてから僅か約1ヶ月後。加賀美が代表取締役であることに乗じて肉を強請った葉加瀬と夜見は条件を出され、見事それをクリアした。加賀美は約束通り高級肉を買い、配信上で3人揃って焼肉とすき焼きを堪能したのである。その後に皆でプレイしたホラーゲームも含めて、同期トリオの関係性を強固にした出来事であった。
 
 それからずっと3人で共に歩んで来た。常時隣り合っていた訳ではない。それぞれの道があり、時にそれは重なり合い時に姿が見えぬ程離れていた。誰かが先行して先を照らすこともあれば、誰かが誰かの背を押すこともあった。歩幅と歩調は違えども、3人共歩み続けていた。
 葉加瀬はこの島にこそ来ていないが、2人の姿をずっと見ていた。戦争の間、一視聴者と同様に手に汗を握りながら双方の応援をしていたことだろう。
 そして戦いが終われば、そこに敵味方は無い。
 あるのはいつもの狂騒のような平和な日常だ。
 
「ホラゲリベンジするけど! 怖いから! 来て!!!」
「しょうがないですねぇ」
「また一緒に頑張ろうねふゆきぃ!」
 
 葉加瀬冬雪、加賀美ハヤト、夜見れな。
 人は3人を『SMC組(すめしぐみ)』と呼ぶ。


【元動画】
・戦争本番:加賀美視点夜見視点
・戦争直前大討論会
・2019年8月SMC組オフコラボ:焼肉・すき焼き回その後のホラゲ回
・3月30日20時 SMC組ホラゲオフコラボ(終了後リンク記載)

小説にじさんじARK戦争夜見れな葉加瀬冬雪SMC組

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