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 プロフィール・説明Twitterマシュマロ

最終更新:2020/03/20 23:32

社長達のArk実況プレイを戦記っぽく書いた二次創作物。
大体は本編に寄せていますが、各種変更・誇張表現などを交えています。
事実関係は他視点含めた配信をご確認ください。

第3話。本編に追い付くのは諦めてます。

第1話前回の話次回の話


【元動画】
 イブラヒム、伝言に気付く
 バリスタ・防御柵建造
 会談回↓

社視点夢追視点イブラヒム視点フレン視点

 

 改めて論じるまでも無く、水とは文字通りの生命線であり、治世に於ける重要な要素である。四大文明が全て大河の畔で生まれたのも半ば必然であり、このArkという島に於いてもそれは変わらない。
 しかし全ての民が充分な水を得られるとは限らない。土地は有限であり、全員が水辺に住めるとは限らない。雨水を溜めたとしても天候は気紛れであり、晴れ続きは死を招く。
 これを解消すべく人間はその叡智と器用さによって、水を遠方まで引き伸ばす管を作った。これさえあれば皆渇きに苦しむことは無い筈であった。
 だが見えざる世界の掟がそれを拒み、斯くて人間共は狡猾に策略を巡らせる。
 
 改めてここに記そう。
 この物語は英雄譚などではない。交渉人や商売人が戦火に乗じて立身出世する話でもない。
 それとは真逆、自らの快楽の為に踊り狂った極悪人が如何に戦乱そのものとなったかを後世に伝える為の掌編である。
 
 ”静かなる狂気”加賀美ハヤト。
 ”苦悩する善人”イブラヒム。
 対照的な2人による会談の行方や如何に。
 
 
 
にじさんじARK戦争 第1章第3話『アラサーメイフ会談』
 
 
 
 イブラヒムは困惑していた。
 同期であるフレン・E・ルスタリオとメリッサ・キンレンカと島にやって来たこの日、予想外のことが起こっていた。3人の故郷の名である「コーヴァス帝国」という名を冠したトライブを組むまではいい。女性2名が迷子になったり島での生活が覚束無いのもまだいい。だがこれより店舗となる予定の場所に居座る2羽のドードーを見て、何が起こっているのか必死に考えていた。
 否、意図は明確である。「同盟希望 手付金 加賀美」「ボクタチ トモダチ カガミ」、鳥達の名を読んで字の如くである。後者は少々怪しいウイルスに犯されていた状態で書いたのではと恐怖を覚えるも無視することは出来ない。
 
 これまでイブラヒムと加賀美の接点は無い。強いて言えばイブラヒムが別の世界で三国統一を為さんとした際、武将の一として加賀美を始めとした諸ライバー達の名を借りた程度である。あちらの世界でも神の采配によって加賀美ハヤトは一国の君主であり、イブラヒム軍と同盟を結び後に戦った。その後の仔細は該当の戦記に記載を任せるがなかなかに奇縁となっている。
 直接会話したことは無くとも、イブラヒムは加賀美を尊敬していた。かつて島の外、サバイバルとは全く異なる性質を持つライブステージという戦場で歌い、抜群のパフォーマンスを見せ付けた加賀美の姿に驚嘆し、同じ「にじさんじ」という団体の看板を担ぐ重みを知って奮起した。
 この島での生活もその一歩となる筈であった。だが隣人からの唐突な通告に、戸惑いながらも周囲を見て回る。梯子の上の看板、門の前の看板。同盟を希望しつつも断れば敵対を匂わせる文章に「ヤバ」と無邪気に笑うフレンの横で、イブラヒムは思案していた。
 今のコーヴァス帝国は出来たばかりの貧弱国である。文明レベルとしては加賀美の王国とそう差はあるまい。拠点は近接しているとは言え、それぞれ崖の上下で発展を続ければよいのだから同盟を組む理由が見当たらない。単に新人に絡むにしては事前の接点も少な過ぎるし、本当にそうなら”Discord(直接通話)”を使えばよい。なのに何故こんな回りくどい手段を?
 考えるイブラヒムの周囲、イブライバー(イブラヒムのリスナー)の合間で何処からか飛んで来た伝書鳩がそっと囁く。それに気付いたか、自分で推理したかは定かでなくとも、どちらにせよ本質へと思い至った。
 
「……水を引きたい?」
 
 そう、求めているのはイブラヒムの持つ物ではなくその周囲の建築権である。ただ、これもまた素直に協力して欲しいと頼めば済む話にもなろう。イブラヒムだって先輩を困らせたくはない。
 巨大な関所を見上げながらイブラヒムは更に思考を続ける。この門が閉ざされ、ロックを掛けられれば別トライブの者は通行出来ない。今は開いてはいるがそのような制限をいつだって掛けることが出来るのだという暗黙の脅迫であると、温泉王は導き出した。
 求められているのは単なる馴れ合いではない。ならば同盟してもいいが、唯々諾々とは認めない。向こうからの頼みならば対価を求める。先輩後輩などこの島では無意味である。商売人ならば当然とばかりに、臆さず対等の姿勢を崩さないこの新星は逸材であった。
「交渉希望 コーヴァス帝国 イブラヒム」という伝書ドードーが王国の拠点に置かれ、水同盟へ向けまたひとつ事態は進行した。
 
 
 
 乱世を生き抜く為のもうひとつの重要な要素、それは情報である。
 何処かに録音機器でも仕込んでいたのか、イブラヒムの強気な発言は音声記録として加賀美の手許に渡っていた。
 敵対者に飢えていた加賀美にとって、イブラヒムの姿勢は実に素晴らしいものだった。よって同盟を恙無く結ぶ為の準備に取り掛かる。
 即ちイブラヒムの拠点を一望に出来る崖沿いにバリスタを取り付けた。コーヴァス帝国の者達の頑張りにより、1日にして彼らの拠点はアルファスレイヤーズキングダムの物を上回っていたが、上から撃ち下ろせば時間は掛れども一方的な蹂躙が可能である。
 更に防御と攻撃を兼ねて、木の防御柵を東西の関所の壁や脇に仕掛けて敵の侵入を防いだ。これは所謂馬防柵であり、端的に説明すれば先を尖らせた丸太を複数本組み合わせ、無理に突破しようとするとその刺が突き刺さり傷を負わせる柵である。加賀美はそれを崖沿いにも置いた。
 崖下から自らの拠点を見上げた加賀美は実に満足した。逆光の中、バリスタや柵の先端が岩肌から覗く。刺々しく威圧的なその外観は、そこに住まう者達が危険人物であると言語を要さずに伝えていた。これが後世に伝わる「バリスタ映え」である。
 
 このような準備を経て、遂にその日が訪れる。
 2020年2月29日。加賀美・イブラヒム双方が会話し、同盟の可否を定める会談が行われたのである。
 イブラヒムが島に訪れるまで、加賀美は1人で素材集めをしていた。この日は島の外でイカした連中による大きな”色塗り”の大会が行われており、水辺は酷く静かであった。そんな中降りてくるクレートの光の中、現れたのは最早幾度目か分からぬ邂逅となるアルファ・ユタラプトルであった。早々に食い殺された加賀美はこの島でも上位陣に位置する実力者・叶に助けを求める。
 結果、アルファは僅か数回の攻撃で屠られた。叶が騎乗するのは正に陸上の頂点捕食者・ギガノトサウルス。そのあまりの巨体と貪欲な攻撃に加賀美は呆然とし、去って行くその背を眺めながら「ヴィーガン、あれとどう戦いましょうか……」と傍らのテリジノサウルスに語り掛けたが、返事はある筈も無かった。いずれ世界の覇者にならんとする加賀美にとって叶もまた倒すべき相手だったが、その差はあまりにも大き過ぎるように見えた。
 
 問題は一旦先送りにし、加賀美はイブラヒムと連絡を取る。始めはチャットであった。
 夢追と社も合流し条件交渉を行う。しかし王国の拠点に叶が来訪、バリスタを己に撃つよう要求した。ダメージの値を確認する為であり、本当に撃ってよいのか充分な念押し後に社が引き金を引く。先日パラサウロロフス相手に900ダメージを叩き出した鉄の矢であるが、この度叶に出したのはたったの65ダメージであった。
 あまりの戦力差に王国の3人が驚愕する中、加賀美の身体が宙に浮いた。
 
「誰だこれ誰だ?! 連れ去られた! ごめんなさい連れ去られました!」
 
 アルゲンタヴィスで加賀美を攫ったのはこの島の管理者でもあり、歴戦の勇者である本間ひまわりだった。彼女は一旦加賀美を拠点がまだ見える位置で解放し、改めて社を名指しすると大鳥で掴んで何処かへ攫っていく。躊躇わずに撃つべきだったと後に加賀美は語ったが、トドメとばかりに加賀美の画面がフリーズする。予想外の出来事が次から次へと発生する事態ではパニックになるなというのは無理な話だ。
 一方実に手際良く昏睡させられ、手錠と足を戒められた社は会談会場からさほど遠く無い木の檻の中に幽閉された。社とひまわりは父娘のような関係であったのだが、この島に於いてはそんな絆など無力であったということか。
 だがその原因もまた加賀美であった。「ちょっかい出していいですよ」と事前に秘密裏にひまわりへ連絡していたのである。しかしまさかこのようなタイミングで、しかも狙われるのが社だとは思ってはいなかった。後にひまわりは加賀美本人ではなく社を襲った理由を「本人よりもその仲間を攫った方が精神的負荷が大きいから」と可愛らしくも凶悪な笑みと共に語っている。正に想定通りとなったのだが、加賀美がまごつく内に社は自力で脱出を果たし帰還した。
 文字通り「ちょっかい」の域としたか、直後に会談を控えているからか加賀美はそれを追及しなかった。この昏睡・拘束・監禁が対人間戦闘に於いて最も基礎的かつ有効な戦略である知っていたが、今は目の前の問題を解決すべきであった。
 
 紆余曲折ありようやく同盟の話に戻る。
 しかしここで更にもうひとつ問題が発見する。それはシステムの不具合により、現状同盟が作れない状況にあったのである。
 現状を打破すべく、アルファスレイヤーズキングダムの拠点までやって来たコーヴァス帝国の3人が作った席に着き、音声通話が行われることとなった。
 王国側は加賀美、その後ろに社と夢追。帝国側はイブラヒム、その後ろにフレンとメリッサ。何故か夢追の弱点を握っているとフレンが牽制して来るも、一旦各国代表による会話が開始される。
 加賀美の要求は軍事同盟。弱小国同士が手を組むことで大国へ対抗し、水と立地という互いの弱点を共有するのが目的である。
 一方イブラヒムの要求は同盟の盟主を己とすること。これに対し加賀美は一瞬懸念の姿勢を見せるも、システム上締結が可能であればよいという見解を行う。しかしイブラヒムが試してもやはり同盟の作成は出来ない。
 
「今起こり得る状況を全部考慮しても水掛け論になっちゃうから、今はとりあえず同盟を組むってところだけ決めて、後はまた皆で決めようよ。それが同盟ってものじゃない?」
 
 事態を進めるべく夢追が穏やかに提案するも、帝国側からは胡散臭いと言われ、加賀美もまた「向いてるのか向いていないのか分からない」と評価に迷う。正に参謀らしい振る舞いである。
 この後も「この話は前向きに一旦持ち帰らせてもらいたい」というイブラヒムに対し、夢追は「いつまでに回答が貰えるか」と追及。最終的に一両日中に返答、合意の場合は不具合が直り次第締結と定まった。
 こうして始まるまでの混乱はどこへやら、比較的スムーズに会談は終了した。
 だがイブラヒム達が机等を片付けて帰還しようとする中、バリスタ台から帝国の拠点を見下ろして加賀美は呟く。
 
「じゃあ……壊すか、全部」
「え……? 何をですか?」
「水道引けないなって思ったんで、壊しちゃった方が早いかなって思ったんですけど」
「あー成程ね」
「明日明後日まで待ってくれるらしいんで、明日明後日で壊しちゃえばいいのかなって」
「ハヤト?!」
「やめときます?」
 
 忘れてはいけない。加賀美ハヤトの根は蛮族である。この島に来てからか、はたまた以前からか、暴力により自分の意思を押し通し戦火をばら撒かんとしている極悪人である。
 同盟を持ち掛けた上での侵略など一切の躊躇も無い。そして社もまたそれを止めることも無かった。夢追が何とか制止するも、それすら厳密には制止ではない。「水道を引く為には建物が無くなればいい」と時間を掛けて再確認するだけだったが、それでも加賀美は多少冷静さを取り戻した。
 
 強者たる叶とひまわりが見たいものは何か? それは混沌である。面白い光景である。
 それを招くにはどうしたらよいか? 強くならねばならない。たとえ強敵相手だろうとも、或いは勝てるかもしれないと皆に思わせる程度には富国強兵せねばならない。
 現状の王国には何もかも足りなかった。武器も、その原料も、それを運ぶアルゲンタヴィスも、対人戦の知識と技能も。
 トラバサミや墓石への未練を残しながらも、一旦は戦力強化を目指す。その方針により、帝国への攻撃は免れた。
 戦わなければ生き残れない。だが無闇に戦ってもいけない。
 これは隙あらば武力で解決しようとする彼らにとって、実に困難だが同時に白熱する展開でもあった。
 
 アルファスレイヤーズキングダムとコーヴァス帝国。
 水を起因とし、本来同盟を結ぶだけだった筈の二国に生じたきな臭い気配は、着実に島中に広がっていく。
 俗に”四皇”と呼ばれ戦火の中心となる者達は、今はまだ思い思いに島での生活を満喫していた。
 
 加賀美だけでなくイブラヒムとも既に友好関係を結んでいた”猟友会総長”叶。
 静観姿勢を取りつつも対人戦の興奮を知っている”ぷぅとひま”本間ひまわり。
 多くの非戦闘員を抱えながら恐竜と建築を愛す”ヨルミナティ”夜見れな。
 ひっそりと1人で盤石な城を作り続ける”ジュラシックワールド”渋谷ハジメ。
 
 今後彼ら彼女らのトライブメンバー、ひいてはそれ以外をも巻き込む戦火の発端は未だ加賀美の中に抱かれたままであったが、着実に火力を増してゆく。
 攻め込むだけでは無い、協力と交渉という形で顕になるそれは、さしずめ準備完了を示す狼煙ともなろうか。
 
 
 
「今日は、ある人と”ビジネス”をします」
 
 果たして売り渡すのは魂か、それとも。
 
 
 
次の話

小説にじさんじARK戦争社築夢追翔イブラヒム

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